エコキュートの水抜き完全手順!寿命を延ばす清掃と点検のセット方法
2025年12月19日

エコキュートの水抜き(貯湯タンクの底水排水)は、機器の寿命を延ばすために必須のメンテナンスですが、効果を最大化するためには、「給水ストレーナー(フィルター)の清掃」と「ふろ配管の洗浄」をセットで行うことが最も重要です。この3点セットを半年に一度行うことを推奨します。
水抜きだけでは、タンクの底に溜まった不純物しか排出できません。配管やフィルターに溜まった水垢やゴミが放置されると、熱交換器の効率を低下させ、結果的に水の流量センサーなどの故障リスクを高めてしまうからです。
例えば、水抜きでタンクの底をきれいにしても、給水ストレーナーが目詰まりしていると、ヒートポンプへ送る水の量が不足し、エコキュートに負荷がかかります。この3点セットのメンテナンスを行うことで、機器の効率を維持し、修理費用を大幅に抑えることが可能です。
この記事では、貯湯タンクの「水抜き」の安全で確実な完全手順に加え、セットで実行すべき清掃・点検方法を詳しく解説します。この情報をもとに、ご自宅のエコキュートの寿命を最大限に延ばし、故障知らずで快適に使い続けましょう。
なぜ必須?エコキュートの水抜き(底水排水)が寿命を延ばす理由
エコキュートの貯湯タンクは、水道水を直接温めて貯めているため、水抜きは単なる掃除ではなく、機器の健康を保つための必須のメンテナンスです。
タンク底部の「水垢(スケール)」や不純物の正体
水道水には、人体には無害なミネラル成分(カルシウムやマグネシウム)が含まれています。水を高温で温めたり、貯めたりする過程で、これらのミネラル成分が結晶化し、タンクの底に水垢(スケール)や泥状の不純物として沈殿していきます。
- 不純物の量:
特に日本の水道水は軟水ですが、地下水や井戸水を使用している場合は、さらに多くのミネラルや鉄分、砂などが混入しやすく、不純物の沈殿量が増加します。これらの不純物は、時間の経過とともに層をなして固着していきます。
水抜きを怠った際に起こる3つの深刻な故障リスク
水抜きを怠り、不純物が長期間タンク内に溜まり続けると、以下の深刻なリスクを引き起こします。
- リスク1:配管・センサーの詰まりによる流量異常とその影響
沈殿した不純物が給水経路や循環配管に流れ込み、詰まりの原因となります。水の流れが阻害されると、流量センサーが正常な水の流れを検知できず、異常エラー(例:三菱のC21、ダイキンのH75など)を引き起こします。これにより、給湯機能が停止し、修理を依頼する事態に直結します。 - リスク2:ヒーター周囲のスケール付着による熱効率低下と電気代増加
貯湯タンク内部には、夜間に水を温めるためのヒーター(電熱線)が組み込まれている場合があります。ヒーターの周囲に厚くスケールが溜まると、水の熱伝導率が悪化し、設定温度に達するまでに多くの電気を消費するようになります。結果として、ランニングコスト(電気代)が増加します。 - リスク3:タンク内の水の衛生悪化と異臭の発生メカニズム
水抜きをしないと、タンク底部では常に古い水が滞留しやすくなります。この古い水に、外部から混入した有機物や雑菌が繁殖すると、お湯を使用する際に異臭やぬめりの原因となることがあります。水抜きはタンク内の水を定期的に入れ替え、衛生環境を保つ目的もあります。
最適な水抜き頻度と作業が必要な時期
水抜きを行う頻度は、使用状況や水質によって調整が必要です。
- 標準的な頻度:
水道水を使用している一般的なご家庭の場合、機器の効率維持と故障予防のため、最低でも半年に一度(6ヶ月に一度)行うことがメーカー推奨です。 - 高頻度推奨のケース:
井戸水・地下水を使用している場合や、水抜き時に排出される水がひどく濁っている場合は、不純物の沈殿が早いため、3ヶ月に一度に頻度を上げることが推奨されます。 - 作業に適した時期:
特に湿度が低く、雑菌が繁殖しにくい春(4月〜5月)と秋(10月〜11月)の年2回、季節の変わり目に行うのが理想的です。
貯湯タンクの「水抜き」を安全・確実に行う完全手順
貯湯タンクの水抜きは、必ず以下の手順に従って、安全に確実に行ってください。
準備と安全確認(電源オフ、火傷防止、給湯温度の確認)
作業を開始する前に、必ず以下の準備を行います。
- 電源遮断:
貯湯タンクの専用ブレーカーを切り、機器の電源を完全に遮断します。作業中の感電や機器の誤作動を防ぐため、これは必須の作業です。 - 火傷防止:
水抜き時に排出される水は50度〜90度の高温の可能性があるため、素手で触れないよう、ゴム手袋や軍手を着用しましょう。周囲の排水経路を確保し、高温水が周囲に飛び散らないよう注意します。 - 給湯温度の確認:
水抜きは沸き上げ後の高温状態で行うのが効果的ですが、火傷のリスクを減らすため、可能であればしばらくお湯を使わず、タンク内の温度を少し下げてから行うとより安全です。
水抜き手順1〜3:給水栓・逃し弁・排水栓の正確な操作方法
水抜き作業は、給水と排水の経路を正しく操作することが重要です。
- 手順1:給水栓を閉める
貯湯タンクに接続されている給水元栓(給水バルブ)を閉めます。これにより、タンクへの水の供給を完全に止めます。(通常、レバーを横に倒す操作) - 手順2:逃し弁を開ける
貯湯タンク上部にある「逃し弁(逃がし弁)」または「安全弁」のレバーを上げ、タンク内に空気を入れます。これにより、スムーズに水が排出されるようになります。- ポイント:逃し弁を開ける理由と開けない場合の危険性
タンク内の水をスムーズに排水するためには、外部から空気を入れ、内圧を解放する必要があります。逃し弁を開けずに排水栓を開けると、真空状態となり、水がほとんど出ないだけでなく、タンク自体が変形・破損する危険性があります。
- ポイント:逃し弁を開ける理由と開けない場合の危険性
- 手順3:排水栓を開けて排出
タンクの下部にある「排水栓(水抜き栓)」をゆっくりと開けます。通常はノブを回すか、キャップを外すタイプです。- ポイント: 排水時の高温水と排水時間の目安
排水直後は高温水が出ます。勢いよく水が排出され、底に溜まった不純物(茶色や黒っぽい濁り)が一緒に流れ出てきます。排出される水が透明になったら、不純物の排出が完了したサインです。排水栓を閉めます。
- ポイント: 排水時の高温水と排水時間の目安
排出後の復旧手順と再発防止
排水が完了したら、機器を元の状態に戻し、お湯の再加熱を促します。
- 逃し弁を戻す:
開けていた逃し弁のレバーを元の位置に戻します。 - 給水栓を開ける:
閉めていた給水元栓をゆっくりと開け、タンクに水を再び満たします。勢いよく開けると配管にウォーターハンマー現象を起こし、配管に負担がかかるため注意が必要です。 - 重要:エア抜きの必要性と正しい方法
水を満タンにした後、給湯栓(台所など)を開け、水が勢いよく出てくるまでしばらく流し、配管内に残った空気を抜きます(エア抜き)。空気が残っていると、異音の原因や流量センサーの誤作動の原因になることがあります。 - 電源再投入:
最後に、切っていた専用ブレーカーを入れ、電源を再投入します。リモコンにエラーが出ていないか確認し、沸き上げが開始されるのを待ちます。
水抜きとセットでやろう!寿命を延ばす3つの重要清掃・点検
水抜きでタンク底部を清掃した後は、エコキュートの給水・循環経路全体をチェックすることが、故障を防ぐ上で非常に効果的です。
給水ストレーナー(フィルター)の清掃手順と重要性
給水ストレーナーは、給水経路の異物混入を防ぐ役割があり、ここが詰まると機器に大きな負荷がかかります。
- 重要性:
ここが詰まると、ヒートポンプへ送られる水の量が減少し、流量不足によるエラーや機器の過負荷を引き起こします。 - 清掃手順:
- 給水元栓を閉める(水抜きの手順1と同様)。
- 給水元栓のすぐ近くにある給水ストレーナー(キャップ状の部品)を外します。
- ストレーナーの場所と必要な道具:
ストレーナーは貯湯タンクの給水接続口のそばにあり、手で回せるキャップ式のものや、モンキーレンチなどで開けるタイプがあります。事前に工具を確認しておきましょう。
- ストレーナーの場所と必要な道具:
- 内部のメッシュフィルターを取り出し、古い歯ブラシなどを使って付着したゴミや砂をきれいに洗い流します。
- フィルターを元の位置に戻し、キャップをしっかりと締めます。
- 清掃後の水漏れ確認の重要性:
給水元栓を再度開け、キャップやパッキンの周囲から水漏れがないか数分間確認します。水漏れがある場合はキャップの締め直しや、パッキンのズレを確認してください。
ふろ配管の洗浄(自動洗浄機能と手動洗浄剤の活用)
浴槽と貯湯タンクをつなぐふろ配管も、見えない雑菌や湯垢の温床になりがちです。
- 自動洗浄機能の利用:
お使いのエコキュートに「ふろ配管自動洗浄機能」がある場合は、設定を確認し、必ずオンにしておきましょう。これは、浴槽のお湯を抜く際に自動で配管に水を流して洗浄する機能です。- 自動洗浄機能の作動条件と設定確認:
メーカーや機種によっては、浴槽の水が一定量以下になったときや、特定のエラー解除後に作動する条件があります。リモコンの設定メニューで「入」になっているか確認してください。
- 自動洗浄機能の作動条件と設定確認:
- 手動での洗浄:
自動機能がない場合や、より徹底的に洗浄したい場合は、市販のエコキュート専用の風呂釜洗浄剤(ジャバなど)を使って洗浄しましょう。- 手動洗浄剤使用時の注意点:
風呂釜洗浄剤の中には、エコキュート内部の銅配管やパッキンを傷める「硫黄成分」や「酸性度の高い成分」が含まれているものがあります。必ず「エコキュート対応」と明記された洗浄剤を使用してください。メーカーによっては非推奨の洗浄剤を明記しているため、事前に確認が必要です。
- 手動洗浄剤使用時の注意点:
水抜き時に排出された水の異常チェック項目
水抜き作業中、排出される水の状態を観察することで、自宅の水質の異常や配管内の問題を早期に発見できます。
- 異常なサインと対策:
- 強い濁りや泥状の沈殿物: → 長期間水抜きを怠っていた、または井戸水や地下水を使っているサインです。水抜き頻度を3ヶ月に一度に増やしましょう。
- 異物(黒いカス): → 配管内で発生したサビやゴムパッキンの劣化の可能性があります。サビがひどい場合は、配管の点検が必要です。
- 異常な異臭: → 雑菌が繁殖しているか、配管内で何か問題が発生している可能性があります。ふろ配管洗浄の強化が必要です。
凍結対策と水抜き:通常の清掃との違いと長期不在時の対処
エコキュートの「水抜き」には、清掃目的と凍結防止目的の二種類があります。目的を混同しないように注意が必要です。
通常の清掃と凍結対策のための「水抜き」の違い
- 清掃目的の水抜き:
タンクの底水のみを排出し、給水元栓は閉めた後、すぐに再び開けて水を満タンに戻します(本記事で解説した手順)。 - 凍結対策の「水抜き」:
長期不在時や極寒地で、タンクや配管内の水を完全に空にすることが目的です。これは専門的な手順が必要であり、配管内の水を抜く操作が含まれます。
冬季の日常的な凍結予防策(水滴ポタポタと保温材の確認)
完全な水抜きは大変ですが、日常の予防策でほとんどの凍結は防げます。
- 水滴ポタポタ:
特に冷え込む日の夜間は、お風呂や台所の給湯栓から水を少量(水滴が落ちる程度)出し続けることで、配管内の水が動くため、凍結を効果的に予防できます。 - 保温材の確認:
ヒートポンプと貯湯タンクを結ぶ配管の保温材が劣化したり、破れていたりしないか確認しましょう。保温材が傷んでいる場合は、業者に依頼して巻き直すことで凍結リスクを大幅に下げられます。
長期不在時のタンクと配管の完全水抜きと専門業者への依頼
凍結対策として、エコキュートを長期間(1週間以上)停止し、配管の凍結が予想される環境下に置く場合は、機器を空にする水抜きが必要です。
- 手順:
貯湯タンクだけでなく、配管内の水をすべて排出する必要があります。この作業は、機器の故障や水漏れリスクがあるため、必ずメーカーの取扱説明書を確認するか、専門業者に依頼することを強く推奨します。自己判断で不完全な水抜きを行うと、かえって凍結による破損を招く可能性があります。
まとめ
エコキュートの「水抜き」は、貯湯タンクの寿命と効率維持のために不可欠であり、最低でも半年に一度行うべきです。
- 重要3点セット:
水抜きに加えて、給水ストレーナーの清掃とふろ配管の洗浄をセットで行うことで、エコキュート全体の故障リスクを大幅に減らせます。 - 水抜き手順の要点:
作業前には必ず専用ブレーカーを切り、給水栓 → 逃し弁 → 排水栓の順で操作し、排出後は必ず給水栓を再び開けて満水に戻してから電源を入れましょう。 - 異常のチェック:
水抜き時に排出される水に、濁りや異物が見られた場合は、水質による負荷が高いサインです。頻度を上げるか、業者に相談してください。
この記事で解説した手順を実践し、ご自宅のエコキュートを長期間、快適に使い続けてください。


































